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自分に正直でいることの効用は、自分のことを受容できる、自分のことを好きでいられること(藤森かよこ【馬鹿ブス貧乏】⑭)

自分に正直でいることの効用 [苦闘青春期(37歳まで)] 

■自分に正直でいるためには練習が必要

 ともかく、他人の要請に応えることは、成人前にすでに習い性(しょう)となってしまっていることが多い。しかし、いずれは自分で選び決めるしかなくなる。親を含む他人の要請に応じていても、その他人があなたの人生の責任を負ってくれるわけではないと知るときが来る。

 ましてや、あなたはブスで馬鹿で貧乏だから、ほんとうには誰も、あなたの人生に関心がない。あなただけが、あなたの人生に真心(まごころ)からの関心を寄せてくれる。だから、常に常に自分に問うべきだ。

 これが、私がほんとうにしたいことなのか?

 私は、ほんとうにここにいたいのか?

 これが、ほんとうに私の欲しいものなのか?

 これが、ほんとうに私が言いたいことなのか?

 意見のための意見を言っているのではないか?

 そもそも、私には自分の意見というものがあるのだろうか?

 私は、自分の意見を持てるほど、この事柄について知っているのだろうか?

 ほんとうは、何も知らないのではないか?

 自分に正直でいるということは容易なことではない。「今の私は自分に正直でいるだろうか」と常に考えるのは面倒くさいことだ。そもそも馬鹿なあなたは、考えることが苦手なので馬鹿なのだから。

 だからこそ、自分に正直でいることを、「機械的に自動的にできる習慣」にできるまで意識しよう。そうしないと、自分に正直でいることができるようにならない。口で言うほど簡単ではないのだ、自分に正直でいるということは。

 繰り返すが、子ども時代は無自覚に周囲の人間の要請に応えざるをえない。自分で判断することは無理だし、自己分析することもできない。外からの刺激に反応しているしかない。

 つまり、誰もが自分に正直でいるようにする練習は青春期から始まる。中年期から自分に正直でいることを意識化して練習するようでは手遅れだ。

 45歳にして自分に正直にしてこなかったと気がつき、いろいろやり直しをしようとしても、できることは限られている。結婚20年経過して、「よく考えたら、あなたのことは最初から好きではなかった」と妻に言われた夫は困る。

 倒産しないし、競争も厳しくないし、結果を出さなくてもいいのでラクだからと思い、どこかの役所の試験を受かって公務員になったものの、20年後に「ほんとうはこの種の仕事に興味はなかった」と言う男性がいたら、彼の妻は困る。その妻は、彼が公務員だからこそ結婚したのだから。

 自分に正直でいるほうが、自分に無駄な負荷(ふか)もかからない。結果的には他人に迷惑をかけずにすむ。自分に正直でいようと常に心に問うことは、青春期のうちに習慣にしよう。

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課 程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。  

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